第230章

四季ホテル。

  島宮奈々未は夏目冬馬に車椅子を押させた。弱みを見せるなら、とことん演じ切る――そのつもりだった。

  もともと身体が弱く、胎児の状態も安定しているとは言い難い。車椅子でも不自然ではないし、文句のつけようもない。藤原邦達に疑われる心配もない。

  ロビーで少し足を止め、フロントに確認する。

  藤原邦達がチェックインしてから外出した形跡はあるか。

  丹羽光世の部下が追えていたのは「入った」ところまでで、「出た」ことは掴めていない。ただ念のため、裏を取っておきたかった。

  フロントは藤原邦達を覚えていたらしく、にこやかに答えた。

「そのお客様でしたら、外出はさ...

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